美味しい夢の話。ほんとうの話。

週明けから気圧の変化にやられてました。全国の気象病のみなさま、お疲れ様です。

なんもできん…と布団にもぐっていたら夢をみた。美味しい店の夢。

その店は、にぎやかな四条通りから一本道をそれた場所にある。看板も小さく、見落としてしまうほど。ほんとうにここ?と思いながら階段を上った先には、きれいなのれんが小さく光っている。

よし、と思いながらドアを開けると、ぶわっと明るくにぎやかな空間が広がる。

店内にはテーブルが3つ…4つほど。おそらく地元の方々だろう。みんな慣れた様子でお店の空気を楽しんでいる。磨かれたコの字型のカウンターの奥には、清潔な白衣に身を包んだ店主がひとり。あくまで静かに、そつなく…そこだけまるで別世界のようだ。

案内されたのは、カウンターのいちばん端の席。本日のお酒が書かれた黒板の目の前。よしよし、いい感じ。

「とりあえずビール」の1杯目が空かないあいだに、お目当てのスッポンの土瓶蒸しが出てきた。早い。

アツアツの土瓶の重さを感じながら、猪口にゆっくりとスープを注ぐ。こぼれないように、火傷しないように、そっとひとくち…はぁ、美味しい。冷えた体に一気にスッポンの旨味が駆け巡る。土瓶の蓋を開けると、そこにいたのはちゅるちゅるのスッポンの身と、まっしろなあわ麩。あぁもう、なんとも京都らしいではないか。

ここからはお店の真骨頂。日本酒にあう料理をおともにどんどんお酒を楽しみましょう。

その名も「日本酒にあうレーズンバター」はもう、絶品。見た目はほろほろっとしてるのに、口の中に入れるとふわぁっと優しく溶けてバターの風味が広がる。水のようにすすっと喉を流れる「にいだしぜんしゅ」と合う、合う。ねっとりぷちぷちの手作りカラスミもたまらないわぁ。しっかり塩味の効いたカツオの酒盗は、てんてん、とお箸の先に付けてぺろり。ガラスの徳利は気づけばすっかり空っぽに。

お次は「而今」の搾りたて生酒。店主が目の前に置いてくれたボトルには、吹きこぼれ注意の書き添え。あぁやった、大好きなタイプだわ。苦みと旨味がガツンとやってきて、スッと消えていく…白濁した酒。

なんでも生がすきなのね、と言われ、えぇそうですよと笑顔でうなずく。

さんざん食べて、飲んでいるのにちっともいやらしく酔わないし、胃も重たくならない。ふしぎ。次から次へと食べられるし、呑めてしまう。

ぴっと襟のたった鯖寿司をいただくころ、お店の奥でカラオケ大会が始まった。え?ここそんなのもあり?あら、楽しそう。演歌なら私も1曲披露しないと…そうねぇ、この賑やかさならやっぱり河内おとこ節…って、あぁあれは大阪だからだめじゃん…。

と、選曲を迷っていたら目が覚めた。

暑いと思ったら、電気毛布マックス。どおりで…汗かいてる。なんてことはない、夢とほんとうの狭間で、この間行った美味しいお店を反芻していただけだった。

あぁ、よかったなぁ…美味しかったなぁ… てらまち福田。

もちろん、現実ではカラオケ大会なぞございません。帰り際は店主が手を止め、1組1組ていねいにお見送りしてくださいます。

こちら、年始のおせちも作られているそう…。あぁもうぜったい、来年…違った、再来年のおせちはこちらに頼みたいわ。

来年のことを言うと鬼が笑うっていうけど、この場合はどうなの?

笑うを通り越して、金棒担ぎながら呆れられるのかしら……。

てらまち福田/teramachihukuda
居酒屋のようにカジュアルな空間で、襟のたった料亭の料理を。料亭の料理を、居酒屋のように笑顔あふれる空間で。絶妙な幸せの塩梅がたまらない。お腹と心を満たしてくれる料理店。