伊根満開の思い出

海に面した舟屋が並ぶ、伊根町に鞍を構える向井酒造さん。

蔵前の、潮風浴びるちょっとしたスペースで、赤米を使ったお酒をひとりいただいた。

しばらくすると、同じくお酒を購入されたばかりのご夫婦がふらり。

「あら、先客がいらっしゃったのね。ごめんなさいね」
「いえいえとんでもないです。どうぞどうぞ」

日本酒をきっかけに話が膨らみ、ご主人はあちこちご旅行されてる様子をタブレットで見せてくださった。

お子様は独立され、度々お2人だけの旅を楽しんでおられるそう。ご主人の手慣れた操作で、宿の雅な設えに美味しそうな料理、笑顔の2ショット写真が画面に次々と浮かび上がる。

「やぁねぇお父さんったら。1人でゆっくりしてらしたのに、ごめんなさいねぇ」

いえいえとんでもないです(再)とお礼を述べ別れたその後、小雨の中バス停まで歩いているところを、後ろからやってきたご夫婦の車に助けてもらうことになる…。

ご夫婦にお礼を告げ、降りたバスの停留所は、伊根湾をめぐる船乗場の前。この日はあいにくの天気で午後からの便はすべて欠航となり、お土産物を置く船乗場は閑散としていた。

「バスをお待ちですか?」

そう声をかけてくださったのは、制服に身を包んだスタッフさん。

伊根町は、海に面した舟屋の風景が名物。聞くと、自家用車で訪れる観光スポットとして、コロナ禍も人気が絶えなかったらしい。

「夏はコバルトブルーの海、冬は舟屋や山間に積もる雪がまた、美しいんですよ。ぜひまたいらしてください」

船の結構で他にお客様がいなかったから。次のバスまで時間があったから。そんな偶然で生まれる旅ならではの会話が、愛しい。

スタッフさんに見送られ乗り込んだバスでは、

「もしよかったら左の席に移動されませんか。海が綺麗に見えるので」

運転手さんがそう声をかけてくださった。

なんだかほんと、良い方ばかりだったなぁ…伊根。

ずっと前のそんな記憶を思い返しつつ、2023年後半戦スタート。

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