春が来てる。

西表島「青烽窯」さんの茶碗で一服。

釉薬は振るとカララっと音が鳴る『鈴石』を砕いたもの。鈍色のなかに光る結晶が、浜辺の砂粒のようでもあり、無数の星のようでもあり美しい。

お店の奥に鎮座するつるりと美しいお茶碗にも心惹かれたのだけど、こうして見ると、お外に置かれ風に吹かれていたこちらを選んでよかった。今の自分にしっくり馴染む。

毎度毎度のことになるが、生き物が春へと動き出すこの時期が本当に苦手だ。

固い木皮を押し上げ、じりじり表へ出ようとする芽吹きの音が聞こえるような。徐々に温かくなり始めた土のなかで、静かにうごめく生き物の様子を肌身で感じるような。

360度、ぐるっと見渡す限りの自然が発するエネルギーにメッキリやられてしまう。

都会で過ごす時間が長い人は束の間の自然に癒しを感じるというが、私は真逆だ。

新大阪からの御堂筋線。乗り込んだ電車の人の多さにいつもホッとする。肩が触れ合うほどそばにいるのに、エネルギーはまったくリンクしない。その無神経さにホッとするのだ。

幽霊より生きている人間のほうが怖いと言ったりもするけれど、生きている人間よりすぐそばにある自然の方がずっと怖い。怖くて強い。

昨日はううう…っとその強さにやられていたら、暦は立春だった。季節を読む昔の人はほんとにすごいなぁ。

…そんなことを考えつつ、ニガテな春をやり過ごしています。